医療保険とがん保険はどう違うの?併用できる?FPが解説

なんとなく名前が似ていて、違いが分かりづらい医療保険とガン保険。
この2つはどう違うのか、どちらに加入するほうがよいのか、FPが解説していきます。

医療保険とがん保険の違いとは

医療保険とがん保険には、一般的に次の4つの違いがあります

①保障の対象
②給付金のおり方
③免責期間
④支払限度

それぞれについて詳しく解説します。

①保障の対象が違う 

<医療保険>
医療保険の保障の対象は、病気・ケガ全般です。自費診療の美容整形などは保障の対象に含まれません。
医療保険で保障される病気のなかにはがんも含まれます。

<がん保険>
がん保険の保障の対象はがんのみです。

医学的にはステージ1以上のがんのことを「悪性新生物」と呼び、ステージ0のがんといわれるものは「上皮内新生物」と呼びます。
悪性新生物のみ保障されるがん保険のほか、上皮内新生物も保障でカバーできるがん保険もあります。

②給付金のおり方が違う

<医療保険>
医療保険では、入院給付金と手術給付金の2つが主な給付金です。

入院給付金では、病気やケガで入院した場合に設定した日額に入院日数を乗じた金額が保険会社から支払われます。
例えば入院日額5,000円の医療保険に入っていた場合、5日間入院すると5,000円×5日=25,000円を入院給付金として受け取れるます。

手術給付金は、定額または倍率方式(手術の内容に応じて入院日額の5倍、10倍、20倍、40倍など)で設定されていることがほとんどです。

<がん保険>
がん保険の給付金の特徴は、がんと診断されたりがんの治療が始まったりした時に一時金として100万円や200万円といった形でまとまったお金を受け取れることです。
これをがん診断給付金やがん治療給付金といいます。

再発や転移の場合にも一定の条件を満たせば100万円を毎年や数年に一回受け取れたり、治療を続けている限り毎年100万円を受け取れたりするがん保険もあります。

また、医療保険と同じく入院日額に応じたがん入院給付金があるほか、がん通院給付金の特約を付けるケースもあります。

近年がんの治療では平均入院期間が短期化しており、通院で抗がん剤治療や放射線治療を受けることが一般的です。入院ではなく通院での治療であっても、がんの治療期間中は体調が優れず働けない可能性が高いため、通院給付金が出るタイプのがん保険だと安心ですね。

③免責期間が違う

<医療保険>
医療保険では、基本的に免責期間はありません。
例外として、加入の時点で持病や既往歴があり、特別条件が付いて特定の部位や疾病に免責期間がつくケースはあります。

<がん保険>
がん保険では、ほとんどの商品で90日間の免責期間があります。
つまり、責任開始日から90日の間に診断されたがんについては不担保となり、保障は91日目から開始されるということです。

がん保険では何らかのがんを疑う自覚症状(乳房のしこりなど)が出てから急いで加入する人もいるため、保険会社の収益性と加入者の公平性を保つ目的で免責期間が設けられています。

④支払限度が違う

<医療保険>
1回の入院の支払限度日数のほか、一生の通算でも入院の支払限度日数が設けられています。
1回の入院については30日、60日、120日といった制限があります。通算では、病気の入院で1,000日、ケガの入院で1,000日という形の制限になります。

<がん保険>
がん保険は、1回の入院・一生の通算入院ともに無制限となっていることが多いのが特徴です。入院が長引くと、ある時点(入院61日目など)から入院給付金が2倍になるタイプのがん保険もあります。

医療保険とがん保険は併用が可能!

一つの保険から給付金を受け取ってしまうと、他の保険では給付金が出ないのではないか…と考える方も多いのですが、生命保険は複数加入していてもそれぞれから給付金を受け取ることができます。(先進医療特約については例外)

つまり、医療保険とがん保険は併用することが可能です。

どちらに加入するほうがよい?

医療保険とがん保険は特徴が大きく異なるため、一概にどちらに加入するべきとはいえません。
病気になったとき・がんになったときのリスクに備えて、両方に加入するのも一つの方法です。

しかし、不安だからといって過剰な保障の保険に加入し、高額な保険料で家計を圧迫するのは元も子もありません。
無理のない保険料で、安心できる保障を慎重に検討することが大切ですね。

選び方で大切なのは2つの「期間」

医療保険やがん保険への加入を検討する際、注目してチェックしてほしいのが「保障期間」と「払込期間」の2つの期間です。

<保障期間:終身がおすすめ>
医療保険・がん保険ともに、使う確率が高いのは老後になってからです。
日本では病院のベッドで息を引き取ることがほとんどなので、特に医療保険は老後に必ず使う機会がやってきます。

「保険料が安いから、現役のうちだけの保障でいいや」と現役のうちだけの保障にしていると、保険を使う頻度が高い老後になった時に保障が切れてしまうことになります。
老後になってから慌てて加入しなおそうとしても、保険料がかなり高額になるほか、健康状態が悪ければ保険会社の診査に通らない恐れもあります。

健康でできるだけ若いうちに、お墓に入るまで一生使える終身の医療保険・がん保険に入っておくのがおすすめです。

共済タイプの保険や勤務先の団体保険の保障期間はほとんどが定期(例:60歳まで)となっているので、老後のことを考えるとFPの視点ではおすすめできません。

<払込期間:現役のうちに払い終わるのがおすすめ>
払込期間には「終身払」と「短期払」の2種類があります。

終身払は、読んで字のごとく亡くなるまで一生涯保険料を払い込みつづけていくこと。
短期払は「10年払」「60歳払」といった形で保障期間よりも短い期間で保険料を払い終えることです。

月々の保険料は終身払のほうが安いのですが、保険料を抑えたいからといって安易に終身払を選択するのはやめましょう。

終身払は老後も保険料の引き落としがかかり続けるため、貯蓄や年金で暮らしていく老後生活の負担になります。

また、終身払には失効のリスクもつきまといます。あまり知られていないのですが、保険料は2か月連続で引き落としができなかった場合「失効」となって保障が失われてしまいます。
失効して1年以内などであれば復活の手続きもできるのですが、健康状態が問われるので持病などがあれば復活できない可能性も高いです。
老後に認知症となり、口座管理が困難になって自分も家族も気付かないうちに失効していて、いざ入院した際に失効に気付いた…という悲しいケースもあります。

70歳半ば以降まで保険を続けていた場合は、短期払のほうが一生で払い込む総額保険料が安く済む商品がほとんどです。
つまり、男女ともに80歳を超える日本の平均寿命を考えると短期払が総額の保険料ではお得です。

以上の理由から、老後を迎える前の現役のうちに保険料を払い終えられる「60歳払」「65歳払」などの払込期間がおすすめです。

FPに頼ってみるのも一つの手段

医療保険とがん保険の違いは理解できたでしょうか。

様々な保険会社から多種多様な商品が出ている医療保険とがん保険。この中から、自分にぴったりな保険を見つけるのは至難の業です。

保険のプロであるFPは、ぴったりな医療保険・がん保険を見つけるお手伝いができます。悩み始めたら、ぜひFPに相談してみてください。